労働組合法
昭和二十四年六月一日法律第百七十四号
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成することを目的とする。
2 刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十五条の規定は、労働組合の団体交渉その他の行為であつて前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。但し、いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない。
(労働組合)
第二条 この法律で「労働組合」とは、労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう。但し、左の各号の一に該当するものは、この限りでない。
一 役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接にてい触する監督的地位にある労働者その他使用者の利益を代表する者の参加を許すもの
二 団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受けるもの。但し、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、且つ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
三 共済事業その他福利事業のみを目的とするもの
四 主として政治運動又は社会運動を目的とするもの
(労働者)
第三条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。
第二章 労働組合
(労働組合として設立されたものの取扱)
第五条 労働組合は、労働委員会に証拠を提出して第二条及び第二項の規定に適合することを立証しなければ、この法律に規定する手続に参与する資格を有せず、且つ、この法律に規定する救済を与えられない。但し、第七条第一号の規定に基く個々の労働者に対する保護を否定する趣旨に解釈されるべきではない。
一 名称
二 主たる事務所の所在地
三 連合団体である労働組合以外の労働組合(以下「単位労働組合」という。)の組合員は、その労働組合のすべての問題に参与する権利及び均等の取扱を受ける権利を有すること。
四 何人も、いかなる場合においても、人種、宗教、性別、門地又は身分によつて組合員たる資格を奪われないこと。
五 単位労働組合にあつては、その役員は、組合員の直接無記名投票により選挙されること、及び連合団体である労働組合又は全国的規模をもつ労働組合にあつては、その役員は、単位労働組合の組合員又はその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票により選挙されること。
六 総会は、少くとも毎年一回開催すること。
七 すべての財源及び使途、主要な寄附者の氏名並びに現在の経理状況を示す会計報告は、組合員によつて委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少くとも毎年一回組合員に公表されること。
八 同盟罷業は、組合員又は組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票の過半数による決定を経なければ開始しないこと。
九 単位労働組合にあつては、その規約は、組合員の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正しないこと、及び連合団体である労働組合又は全国的規模をもつ労働組合にあつては、その規約は、単位労働組合の組合員又はその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正しないこと。
(交渉権限)
第六条 労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために 使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する。
(不当労働行為)
第七条 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。
二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
三 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
四 労働者が労働委員会に対し使用者がこの条の規定に違反した旨の申立てをしたこと若しくは中央労働委員会に対し第二十七条の十二第一項の規定による命令に対する再審査の申立てをしたこと又は労働委員会がこれらの申立てに係る調査若しくは審問をし、若しくは当事者に和解を勧め、若しくは労働関係調整法(昭和二十一年法律第二十五号)による労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言をしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること。
(損害賠償)
第八条 使用者は、同盟罷業その他の争議行為であつて正当なものによつて損害を受けたことの故をもつて、労働組合又はその組合員に対し賠償を請求することができない。
(基金の流用)
第九条 労働組合は、共済事業その他福利事業のために特設した基金を他の目的のために流用しようとするときは、総会の決議を経なければならない。
(解散)
第十条 労働組合は、左の事由によつて解散する。
一 規約で定めた解散事由の発生
二 組合員又は構成団体の四分の三以上の多数による総会の決議
(法人である労働組合)
第十一条 この法律の規定に適合する旨の労働委員会の証明を受けた労働組合は、その主たる事務所の所在地において登記することによつて法人となる。
(準用規定)
第三章 労働協約
(労働協約の効力の発生)
第十四条 労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによつてその効力を生ずる。
(労働協約の期間)
第十五条 労働協約には、三年をこえる有効期間の定をすることができない。
(基準の効力)
第十六条 労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効とする。この場合において無効となつた部分は、基準の定めるところによる。労働契約に定がない部分についても、同様とする。
(一般的拘束力)
第十七条 一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の四分の三以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至つたときは、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、当該労働協約が適用されるものとする。
(地域的の一般的拘束力)
第十八条 一の地域において従事する同種の労働者の大部分が一の労働協約の適用を受けるに至つたときは、当該労働協約の当事者の双方又は一方の申立てに基づき、労働委員会の決議により、厚生労働大臣又は都道府県知事は、当該地域において従事する他の同種の労働者及びその使用者も当該労働協約(第二項の規定により修正があつたものを含む。)の適用を受けるべきことの決定をすることができる。
4 第一項の申立てに係る労働協約が最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)第十一条に規定する労働協約に該当するものであると認めるときは、厚生労働大臣又は都道府県知事は、同項の決定をするについては、賃金に関する部分に関し、あらかじめ、中央最低賃金審議会又は都道府県労働局長の意見を聴かなければならない。この場合において、都道府県労働局長が意見を提出するについては、あらかじめ、地方最低賃金審議会の意見を聴かなければならない。
第四章 労働委員会
第一節 設置、任務及び所掌事務並びに組織等
(労働委員会)
第十九条 労働委員会は、使用者を代表する者(以下「使用者委員」という。)、労働者を代表する者(以下「労働者委員」という。)及び公益を代表する者(以下「公益委員」という。)各同数をもつて組織する。
(中央労働委員会)
第十九条の二 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項の規定に基づいて、厚生労働大臣の所轄の下に、中央労働委員会を置く。
3 中央労働委員会は、前項の任務を達成するため、第五条、第十一条、第十八条及び第二十六条の規定による事務、不当労働行為事件の審査等(第七条、次節及び第三節の規定による事件の処理をいう。以下同じ。)に関する事務、労働争議のあつせん、調停及び仲裁に関する事務並びに労働関係調整法第三十五条の二及び第三十五条の三の規定による事務その他法律(法律に基づく命令を含む。)に基づき中央労働委員会に属させられた事務をつかさどる。
(中央労働委員会の委員の任命等)
第十九条の三 中央労働委員会は、使用者委員、労働者委員及び公益委員各十五人をもつて組織する。
2 使用者委員は使用者団体の推薦(使用者委員のうち六人については、特定独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第二項に規定する特定独立行政法人をいう。以下この項、第十九条の四第二項第二号及び第十九条の十第一項において同じ。)、国有林野事業(特定独立行政法人等の労働関係に関する法律(昭和二十三年法律第二百五十七号)第二条第二号に規定する国有林野事業をいう。以下この項及び第十九条の十第一項において同じ。)を行う国の経営する企業又は日本郵政公社の推薦)に基づいて、労働者委員は労働組合の推薦(労働者委員のうち六人については、特定独立行政法人の特定独立行政法人等の労働関係に関する法律第二条第四号に規定する職員(以下この章において「特定独立行政法人職員」という。)、国有林野事業を行う国の経営する企業の同号に規定する職員(以下この章において「国有林野事業職員」という。)又は日本郵政公社の同号に規定する職員(以下この章において「日本郵政公社職員」という。)が結成し、又は加入する労働組合の推薦)に基づいて、公益委員は厚生労働大臣が使用者委員及び労働者委員の同意を得て作成した委員候補者名簿に記載されている者のうちから両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。
(委員の欠格条項)
第十九条の四 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで、又は執行を受けることがなくなるまでの者は、委員となることができない。
(委員の任期等)
第十九条の五 委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
(公益委員の服務)
第十九条の六 常勤の公益委員は、在任中、次の各号のいずれかに該当する行為をしてはならない。
一 政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をすること。
二 内閣総理大臣の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行うこと。
(委員の失職及び罷免)
第十九条の七 委員は、第十九条の四第一項に規定する者に該当するに至つた場合には、その職を失う。公益委員が同条第二項各号のいずれかに該当するに至つた場合も、同様とする。
(委員の給与等)
第十九条の八 委員は、別に法律の定めるところにより俸給、手当その他の給与を受け、及び政令の定めるところによりその職務を行うために要する費用の弁償を受けるものとする。
(中央労働委員会の会長)
第十九条の九 中央労働委員会に会長を置く。
(地方調整委員)
第十九条の十 中央労働委員会に、特定独立行政法人とその特定独立行政法人職員との間に発生した紛争、国有林野事業を行う国の経営する企業と国有林野事業職員との間に発生した紛争、日本郵政公社と日本郵政公社職員との間に発生した紛争その他の事件で地方において中央労働委員会が処理すべきものとして政令で定めるものに係るあつせん若しくは調停又は第二十四条の二第六項の規定による手続に参与させるため、使用者、労働者及び公益をそれぞれ代表する地方調整委員を置く。
(中央労働委員会の事務局)
第十九条の十一 中央労働委員会にその事務を整理させるために事務局を置き、事務局に会長の同意を得て厚生労働大臣が任命する事務局長及び必要な職員を置く。
(都道府県労働委員会)
第十九条の十二 都道府県知事の所轄の下に、都道府県労働委員会を置く。
6 第十九条の三第六項、第十九条の四第一項、第十九条の五、第十九条の七第一項前段、第二項及び第三項、第十九条の八、第十九条の九並びに前条第一項の規定は、都道府県労働委員会について準用する。この場合において、第十九条の三第六項ただし書中「、常勤」とあるのは「、条例で定めるところにより、常勤」と、第十九条の七第二項中「内閣総理大臣」とあるのは「都道府県知事」と、「使用者委員及び労働者委員にあつては中央労働委員会の同意を得て、公益委員にあつては両議院」とあるのは「都道府県労働委員会」と、同条第三項中「内閣総理大臣」とあるのは「都道府県知事」と、「使用者委員又は労働者委員」とあるのは「都道府県労働委員会の委員」と、前条第一項中「厚生労働大臣」とあるのは「都道府県知事」と読み替えるものとする。
(船員労働委員会)
第十九条の十三 船員法(昭和二十二年法律第百号)の適用を受ける船員(特定独立行政法人職員、国有林野事業職員及び日本郵政公社職員を除く。以下この項において同じ。)に関しては、この法律に規定する中央労働委員会、都道府県労働委員会並びに厚生労働大臣及び都道府県知事の行う権限は、それぞれ船員中央労働委員会、船員地方労働委員会及び国土交通大臣が行うものとする。この場合において、第十八条第四項の規定は、船員については、適用しない。
4 中央労働委員会及び都道府県労働委員会に関する規定(第十九条の二、第十九条の三第一項から第四項まで及び第六項ただし書、第十九条の四第二項、第十九条の六、第十九条の七第一項後段、第四項及び第五項、第十九条の十、第十九条の十一第二項及び第三項、前条第二項、第三項及び第六項(第十九条の三第六項ただし書を準用する部分に限る。)、第二十四条第二項、第二十四条の二第一項、第二項、第四項ただし書及び第六項、第二十六条第二項並びに第二十七条の二十三の規定を除く。)は、船員中央労働委員会及び船員地方労働委員会について準用する。この場合において、第十九条の三第五項中「七人以上」とあるのは「三人以上」と、第十九条の七第二項中「内閣総理大臣」とあるのは「国土交通大臣」と、「使用者委員及び労働者委員にあつては中央労働委員会の同意を得て、公益委員にあつては両議院」とあるのは「船員中央労働委員会」と、同条第三項中「内閣総理大臣」とあるのは「国土交通大臣」と、「使用者委員又は労働者委員」とあるのは「船員中央労働委員会の委員」と、第十九条の十一第一項中「厚生労働大臣」とあるのは「国土交通大臣」と、前条第一項中「都道府県知事の所轄の下に」とあるのは「各地方運輸局の管轄区域(政令で定める地方運輸局にあつては、政令で定める区域を除く。)及び当該政令で定める区域を管轄区域として並びに当分の間沖縄県の区域を管轄区域として」と、同条第六項中「都道府県知事」とあるのは「国土交通大臣」と、第二十五条第一項中「特定独立行政法人職員、国有林野事業職員及び日本郵政公社職員の労働関係に係る事件のあつせん、調停、仲裁及び処分(特定独立行政法人職員、国有林野事業職員又は日本郵政公社職員が結成し、又は加入する労働組合に関する第五条第一項及び第十一条第一項の規定による処分については、政令で定めるものに限る。)について、専属的に管轄するほか、二以上の都道府県」とあるのは「二以上の船員地方労働委員会の管轄区域」と読み替えるものとする。
(労働委員会の権限)
第二十条 労働委員会は、第五条、第十一条及び第十八条の規定によるもののほか、不当労働行為事件の審査等並びに労働争議のあつせん、調停及び仲裁をする権限を有する。
(会議)
第二十一条 労働委員会は、公益上必要があると認めたときは、その会議を公開することができる。
(強制権限)
第二十二条 労働委員会は、その事務を行うために必要があると認めたときは、使用者又はその団体、労働組合その他の関係者に対して、出頭、報告の提出若しくは必要な帳簿書類の提出を求め、又は委員若しくは労働委員会の職員(以下単に「職員」という。)に関係工場事業場に臨検し、業務の状況若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
(秘密を守る義務)
第二十三条 労働委員会の委員若しくは委員であつた者又は職員若しくは職員であつた者は、その職務に関して知得した秘密を漏らしてはならない。中央労働委員会の地方調整委員又は地方調整委員であつた者も、同様とする。
(公益委員のみで行う権限)
第二十四条 第五条及び第十一条の規定による事件の処理並びに不当労働行為事件の審査等(次条において「審査等」という。)並びに労働関係調整法第四十二条の規定による事件の処理には、労働委員会の公益委員のみが参与する。ただし、使用者委員及び労働者委員は、第二十七条第一項(第二十七条の十七の規定により準用する場合を含む。)の規定により調査(公益委員の求めがあつた場合に限る。)及び審問を行う手続並びに第二十七条の十四第一項(第二十七条の十七の規定により準用する場合を含む。)の規定により和解を勧める手続に参与し、又は第二十七条の七第四項及び第二十七条の十二第二項(第二十七条の十七の規定により準用する場合を含む。)の規定による行為をすることができる。
(合議体等)
第二十四条の二 中央労働委員会は、会長が指名する公益委員五人をもつて構成する合議体で、審査等を行う。
一 前項の合議体が、法令の解釈適用について、その意見が前に中央労働委員会のした第五条第一項若しくは第十一条第一項又は第二十七条の十二第一項(第二十七条の十七の規定により準用する場合を含む。)の規定による処分に反すると認めた場合
二 前項の合議体を構成する者の意見が分かれたため、その合議体としての意見が定まらない場合
三 前項の合議体が、公益委員の全員をもつて構成する合議体で審査等を行うことを相当と認めた場合
四 第二十七条の十第三項(第二十七条の十七の規定により準用する場合を含む。)の規定による異議の申立てを審理する場合
5 労働委員会は、前各項(第十九条の十三第四項の規定により準用する場合を含む。)の規定により審査等を行うときは、一人又は数人の公益委員に審査等の手続(第五条第一項、第十一条第一項、第二十七条の四第一項(第二十七条の十七の規定により準用する場合を含む。)、第二十七条の七第一項(当事者若しくは証人に陳述させ、又は提出された物件を留め置く部分を除き、第二十七条の十七の規定により準用する場合を含む。)、第二十七条の十第二項並びに同条第四項及び第二十七条の十二第一項(第二十七条の十七の規定により準用する場合を含む。)の規定による処分並びに第二十七条の二十の申立てを除く。次項において同じ。)の全部又は一部を行わせることができる。
(中央労働委員会の管轄等)
第二十五条 中央労働委員会は、特定独立行政法人職員、国有林野事業職員及び日本郵政公社職員の労働関係に係る事件のあつせん、調停、仲裁及び処分(特定独立行政法人職員、国有林野事業職員又は日本郵政公社職員が結成し、又は加入する労働組合に関する第五条第一項及び第十一条第一項の規定による処分については、政令で定めるものに限る。)について、専属的に管轄するほか、二以上の都道府県にわたり、又は全国的に重要な問題に係る事件のあつせん、調停、仲裁及び処分について、優先して管轄する。
第二節 不当労働行為事件の審査の手続
(不当労働行為事件の審査の開始)
第二十七条 労働委員会は、使用者が第七条の規定に違反した旨の申立てを受けたときは、遅滞なく調査を行い、必要があると認めたときは、当該申立てが理由があるかどうかについて審問を行わなければならない。この場合において、審問の手続においては、当該使用者及び申立人に対し、証拠を提出し、証人に反対尋問をする充分な機会が与えられなければならない。
(公益委員の除斥)
第二十七条の二 公益委員は、次の各号のいずれかに該当するときは、審査に係る職務の執行から除斥される。
一 公益委員又はその配偶者若しくは配偶者であつた者が事件の当事者又は法人である当事者の代表者であり、又はあつたとき。
二 公益委員が事件の当事者の四親等以内の血族、三親等以内の姻族又は同居の親族であり、又はあつたとき。
三 公益委員が事件の当事者の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人であるとき。
四 公益委員が事件について証人となつたとき。
五 公益委員が事件について当事者の代理人であり、又はあつたとき。
(公益委員の忌避)
第二十七条の三 公益委員について審査の公正を妨げるべき事情があるときは、当事者は、これを忌避することができる。
(除斥又は忌避の申立てについての決定)
第二十七条の四 除斥又は忌避の申立てについては、労働委員会が決定する。
(審査の手続の中止)
第二十七条の五 労働委員会は、除斥又は忌避の申立てがあつたときは、その申立てについての決定があるまで審査の手続を中止しなければならない。ただし、急速を要する行為についてはこの限りでない。
(審査の計画)
第二十七条の六 労働委員会は、審問開始前に、当事者双方の意見を聴いて、審査の計画を定めなければならない。
一 調査を行う手続において整理された争点及び証拠(その後の審査の手続における取調べが必要な証拠として整理されたものを含む。)
二 審問を行う期間及び回数並びに尋問する証人の数
三 第二十七条の十二第一項の命令の交付の予定時期
(証拠調べ)
第二十七条の七 労働委員会は、当事者の申立てにより又は職権で、調査を行う手続においては第二号に掲げる方法により、審問を行う手続においては次の各号に掲げる方法により証拠調べをすることができる。
一 事実の認定に必要な限度において、当事者又は証人に出頭を命じて陳述させること。
二 事件に関係のある帳簿書類その他の物件であつて、当該物件によらなければ当該物件により認定すべき事実を認定することが困難となるおそれがあると認めるもの(以下「物件」という。)の所持者に対し、当該物件の提出を命じ、又は提出された物件を留め置くこと。
第二十七条の九 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第百九十六条、第百九十七条及び第二百一条第二項から第四項までの規定は、労働委員会が証人に陳述させる手続に、同法第二百十条の規定において準用する同法第二百一条第二項の規定は、労働委員会が当事者に陳述させる手続について準用する。
(不服の申立て)
第二十七条の十 都道府県労働委員会の証人等出頭命令又は物件提出命令(以下この条において「証人等出頭命令等」という。)を受けた者は、証人等出頭命令等について不服があるときは、証人等出頭命令等を受けた日から一週間以内(天災その他この期間内に審査の申立てをしなかつたことについてやむを得ない理由があるときは、その理由がやんだ日の翌日から起算して一週間以内)に、その理由を記載した書面により、中央労働委員会に審査を申し立てることができる。
(審問廷の秩序維持)
第二十七条の十一 労働委員会は、審問を妨げる者に対し退廷を命じ、その他審問廷の秩序を維持するために必要な措置を執ることができる。
(救済命令等)
第二十七条の十二 労働委員会は、事件が命令を発するのに熟したときは、事実の認定をし、この認定に基づいて、申立人の請求に係る救済の全部若しくは一部を認容し、又は申立てを棄却する命令(以下「救済命令等」という。)を発しなければならない。
(救済命令等の確定)
第二十七条の十三 使用者が救済命令等について第二十七条の十九第一項の期間内に同項の取消しの訴えを提起しないときは、救済命令等は、確定する。
(和解)
第二十七条の十四 労働委員会は、審査の途中において、いつでも、当事者に和解を勧めることができる。
(再審査の申立て)
第二十七条の十五 使用者は、都道府県労働委員会の救済命令等の交付を受けたときは、十五日以内(天災その他この期間内に再審査の申立てをしなかつたことについてやむを得ない理由があるときは、その理由がやんだ日の翌日から起算して一週間以内)に中央労働委員会に再審査の申立てをすることができる。ただし、この申立ては、救済命令等の効力を停止せず、救済命令等は、中央労働委員会が第二十五条第二項の規定による再審査の結果、これを取り消し、又は変更したときは、その効力を失う。
(再審査と訴訟との関係)
第二十七条の十六 中央労働委員会は、第二十七条の十九第一項の訴えに基づく確定判決によつて都道府県労働委員会の救済命令等の全部又は一部が支持されたときは、当該救済命令等について、再審査することができない。
(再審査の手続への準用)
第二十七条の十七 第二十七条第一項、第二十七条の二から第二十七条の九まで、第二十七条の十第三項から第六項まで及び第二十七条の十一から第二十七条の十四までの規定は、中央労働委員会の再審査の手続について準用する。この場合において、第二十七条の二第一項第四号中「とき」とあるのは「とき又は事件について既に発せられている都道府県労働委員会の救済命令等に関与したとき」と読み替えるものとする。
(審査の期間)
第二十七条の十八 労働委員会は、迅速な審査を行うため、審査の期間の目標を定めるとともに、目標の達成状況その他の審査の実施状況を公表するものとする。
第三節 訴訟
(取消しの訴え)
第二十七条の十九 使用者が都道府県労働委員会の救済命令等について中央労働委員会に再審査の申立てをしないとき、又は中央労働委員会が救済命令等を発したときは、使用者は、救済命令等の交付の日から三十日以内に、救済命令等の取消しの訴えを提起することができる。この期間は、不変期間とする。
2 使用者は、第二十七条の十五第一項の規定により中央労働委員会に再審査の申立てをしたときは、その申立てに対する中央労働委員会の救済命令等に対してのみ、取消しの訴えを提起することができる。この訴えについては、行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)第十二条第三項から第五項までの規定は、適用しない。
(緊急命令)
第二十七条の二十 前条第一項の規定により使用者が裁判所に訴えを提起した場合において、受訴裁判所は、救済命令等を発した労働委員会の申立てにより、決定をもつて、使用者に対し判決の確定に至るまで救済命令等の全部又は一部に従うべき旨を命じ、又は当事者の申立てにより、若しくは職権でこの決定を取り消し、若しくは変更することができる。
(証拠の申出の制限)
第二十七条の二十一 労働委員会が物件提出命令をしたにもかかわらず物件を提出しなかつた者(審査の手続において当事者でなかつた者を除く。)は、裁判所に対し、当該物件提出命令に係る物件により認定すべき事実を証明するためには、当該物件に係る証拠の申出をすることができない。ただし、物件を提出しなかつたことについて正当な理由があると認められる場合は、この限りでない。
第四節 雑則
(中央労働委員会の勧告等)
第二十七条の二十二 中央労働委員会は、都道府県労働委員会に対し、この法律の規定により都道府県労働委員会が処理する事務について、報告を求め、又は法令の適用その他当該事務の処理に関して必要な勧告、助言若しくはその委員若しくは事務局職員の研修その他の援助を行うことができる。
(抗告訴訟の取扱い等)
2 都道府県労働委員会は、公益委員、事務局長又は事務局の職員でその指定するものに都道府県労働委員会の処分に係る行政事件訴訟法第十一条第一項の規定による都道府県を被告とする訴訟又は都道府県労働委員会を当事者とする訴訟を行わせることができる。
(費用弁償)
第二十七条の二十四 第二十二条第一項の規定により出頭を求められた者又は第二十七条の七第一項第一号(第二十七条の十七の規定により準用する場合を含む。)の証人は、政令の定めるところにより、費用の弁償を受けることができる。
(行政手続法の適用除外)
第二十七条の二十五 労働委員会がする処分(第二十四条の二第五項の規定により公益委員がする処分及び同条第六項の規定により公益を代表する地方調整委員がする処分を含む。)については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二章及び第三章の規定は、適用しない。
(不服申立ての制限)
第二十七条の二十六 労働委員会がした処分(第二十四条の二第五項の規定により公益委員がした処分及び同条第六項の規定により公益を代表する地方調整委員がした処分を含む。)については、行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)による不服申立てをすることができない。
第五章 罰則
第三十三条 法人である労働組合の清算人が第十二条で準用された民法の規定に違反して同法第八十四条の三第一項の規定によつて罰せられるべき行為をしたときは、その清算人は、同項に規定する過料と同一の範囲の額の過料に処する。
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